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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第4章 Valet & Earl 〜従者と伯爵〜
老貴婦人のステップは実に優美で流れるようであった。
狭霧はリードする側は初めてだったが、まるで狭霧も上手く踊れるように、彼女に無意識にリードされているかのような踊り心地だった。
「…マダム。ワルツがお上手ですね」
思わず賛辞を口にする。
老貴婦人は嬉しげに微笑った。
「ありがとう。
貴方もなかなかのものですよ。
これからもっと場数を踏めば素晴らしい踊り手になるわ」
…そして、うっとりと呟く。
「…ワルツは大好き。
昔はよく踊ったわ。
…一番最初は…小さな頃に幼馴染みと踊ったっけ…。
とても気持ちの優しい男の子だっだのだけれど、はにかみ屋さんでね。
舞踏会では今の貴方みたいに遠慮勝ちにバルコニーにいたわ。
だから私から誘って踊ったの。
真っ赤になって、それでも一生懸命踊ってくれたわ。
とても可愛かった…。
…今では彼は海軍の大元帥よ」
狭霧は眼を見張る。
「…すご…!
もしかして、ダルタニアン元帥ですか?」
…フランス海軍の大物だ。
異国人の自分でも知っている。
…このおばあさん、やっぱり凄いひとなんだな。
「…ふふ…。
わたくしと踊ると、その男性は大出世するのよ」
…だから貴方もきっと末は大富豪だわ。
悪戯めいてウィンクする。
やっぱりなんだか面白いおばあさんだ。
「それは光栄です」
狭霧は楽しい気分のまま、少し大胆にターンを繰り返した。
「お上手よ。美しい従者さん」
…老貴婦人のアメジスト色のドレスのスワロフスキーがきらきらと月明かりに輝いた。
狭霧はリードする側は初めてだったが、まるで狭霧も上手く踊れるように、彼女に無意識にリードされているかのような踊り心地だった。
「…マダム。ワルツがお上手ですね」
思わず賛辞を口にする。
老貴婦人は嬉しげに微笑った。
「ありがとう。
貴方もなかなかのものですよ。
これからもっと場数を踏めば素晴らしい踊り手になるわ」
…そして、うっとりと呟く。
「…ワルツは大好き。
昔はよく踊ったわ。
…一番最初は…小さな頃に幼馴染みと踊ったっけ…。
とても気持ちの優しい男の子だっだのだけれど、はにかみ屋さんでね。
舞踏会では今の貴方みたいに遠慮勝ちにバルコニーにいたわ。
だから私から誘って踊ったの。
真っ赤になって、それでも一生懸命踊ってくれたわ。
とても可愛かった…。
…今では彼は海軍の大元帥よ」
狭霧は眼を見張る。
「…すご…!
もしかして、ダルタニアン元帥ですか?」
…フランス海軍の大物だ。
異国人の自分でも知っている。
…このおばあさん、やっぱり凄いひとなんだな。
「…ふふ…。
わたくしと踊ると、その男性は大出世するのよ」
…だから貴方もきっと末は大富豪だわ。
悪戯めいてウィンクする。
やっぱりなんだか面白いおばあさんだ。
「それは光栄です」
狭霧は楽しい気分のまま、少し大胆にターンを繰り返した。
「お上手よ。美しい従者さん」
…老貴婦人のアメジスト色のドレスのスワロフスキーがきらきらと月明かりに輝いた。