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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第4章 Valet & Earl 〜従者と伯爵〜
「…最初に言っておこう。
monsieur イズミ。
いや、サギリ。
私は大変厳しい執事だ」

…階下の執事室。
古めかしい年代物の執務机の前で、マレーはじろりと狭霧を睨みつけるようにしながら無愛想に告げた。
…歳の頃は、六十代半ば…くらいだろうか。
外国人の年は分かりにくい。
…きちりと着込んだ黒いモーニングコートに白く高いカラー、黒いタイ、グレーのベスト…。
分厚い胸板はいかにも西洋人のそれで、喧嘩をしたら相手を一撃でのしてしまえそうな強靭な体躯だ。
眼光鋭く、いかめしい鷲鼻…。
にこりともしないそのさまは、まるで日本の仁王像だ。

「…だろうね。見ただけで分かる」
…一番苦手なタイプだよ…。
心の中で呟く。

マレーの白い眉が跳ね上がる。
「敬語を使いなさい。
私は君の上司だ。
ましてや君は年下で新人だ。
…通常、従者に対しては、monsieurを付けるのだが、君はまだ初心者だ。
君が一人前になるまでは名前を呼ばせてもらう。
…良いかな?」

狭霧は渋々、言葉を改める。
「はい。マレーさん」

マレーは滔々と語り始める。
「…君は全く分かっていないようだが、従者の仕事はとても責任のある重要なものなのだ。
従者は常に主人に付き従う。
つまり、従者は常に人目に晒されるのだ。
訪問先の使用人にはもちろんのこと、主人や来賓の方々にも君は常に見られているのだ」

「だから見た目の良い者が選ばれるわけ?…ですか?
マレーさん」

マレーは更に苦虫を噛み潰したような貌をした。
「…見た目が良ければそれで良いと言うわけではない。
言葉遣いはもちろん、立居振る舞い、礼儀作法、知性や教養、品位が大切なのだ。
その従者の美徳、品格、聡明さ、素晴らしさが、旦那様に威厳と尊厳を与えるのだ。
君が品位に欠ける行いをするとそれは即ち、旦那様の社会的信用を損ない、お名前を傷付けることになるのだよ。
…お分かりかな?サギリ」

「…肝に銘じます…。
マレーさん」

…俺はエライ世界に足を踏み入れてしまった…。
狭霧は心の中で盛大にため息を吐いた。

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