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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第4章 Valet & Earl 〜従者と伯爵〜
階下の食堂は、使用人たちの賑やかな話し声と笑い声に溢れていた。
薫りの良いお茶と、甘いバターとクリームの薫りが漂っている。
…昼食が済み、晩餐までにはまだ間があるこの時間帯は、一息つくお茶の時間のようだった。
けれどマレーが食堂に入ると、皆が一斉に起立した。
階下での一番の権力者に敬意を表する為だろう。

マレーは座るようにとジェスチャーし、狭霧を紹介する。
「今日から旦那様付きの従者となったイズミ・サギリだ。
屋敷に務めるのは初めてだそうだ。
皆んな、色々教えてやってくれ」
下僕やメイドが一斉に狭霧を見つめた。

挨拶するようにマレーに即され、狭霧はやや緊張しながら口を開く。
「…初めまして。
今日からお世話になります。
狭霧です。
どうぞよろしくお願いします」
頭を下げた途端、テーブルの端端から声を掛けられる。
「君の噂をしていたんだよ。サギリ。
旦那様は今まで従者を持たなかったんだ。
お眼鏡に叶う美しい青年がいなかったからね。
…それが、面談もせずに一発で決まるなんて…。
確かに凄い美形だな。
ジャポネーゼは皆んな旦那様やサギリのように美しいのか?
おっと。俺はピエール。下僕長だ。よろしく」
燕尾姿の背の高い栗毛の年長の青年が人懐っこく握手を求めてきた。

「私はクレールよ。メイド長なの。
…本当に綺麗ね。
しかもジャポネーゼの繊細で優美な雰囲気の美しさは、フランス人にはない美徳だわ。
旦那様はとてもお優しい寛大なお方だから、勤めやすい職場だと思うわ。
分からないことはなんでも聞いてね」
濃紺の制服に白いエプロン姿、金髪の理知的な…けれど温和そうな女性はまるで姉のように優しく笑った。

縞の服に白いエプロンを掛けた中年の女性が明るく声を放つ。
「皆んな、サギリさんにもお茶を飲ませておやりよ。
さあさあ、ここに掛けて。
私はアンヌ・モリス。ここの料理長さ。
私のクリームティーはいかが?
スコーンにはクロテッドクリームとラズベリージャムをたっぷり塗ってね。
どちらが先でも構わないのさ。イギリス人みたいに堅苦しい決まりはないんだよ。
何しろ、ここはパリだからね」
まるでマシュマロのようにふっくらしたアンヌは豪快に笑った。

…どうやら良い職場らしい。
狭霧は心の底からほっとした。






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