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第2章 知り合いの社長
その日は、霧雨が降っていた。

傘が鬱陶しいくらいで、何ならこの約束も、相当鬱陶しいと思えた。


「例の社長。あんたに会いたいって。」

「うん。」

「これでもね。上玉の常連さんなんだよ。可愛がってもらいな。」

そう言われて、私は母に買って貰った黒のワンピースを着た。


その人は、カフェで私を待っていた。

直ぐに分かった。

写真と同じ人が、カフェの前のベンチに座っていたから。

「初めまして。桃花です。」

「君が桃花ちゃんか。可愛いね。」

私は少しだけ微笑んでみた。

「俺は、武尊だ。そう呼んで欲しい。」

「はい、武尊さん。」

母の常連客だと聞いていたけれど、何だか母よりも若く見える。
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