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第4章 愛妻の秘密

その夜、私は１人で飲んで帰った。

とてもシラフで妻の顔を見る自信がなかったのだ。

それは、妻に対する罪悪感と自己嫌悪、そしてものの見事に木村の手中に墜ちた妻への不信感に苛まれたからだった。



私が帰宅したのは深夜の１時過ぎだった。

皆、寝ていると思い、インターホンは鳴らさずに玄関の鍵を開け、足音を忍ばせて上がり込んだ。

リビングの灯りが点いていた。

（誰か起きているのか？）

リビングを覗いて見ると、

「あなた、お帰りなさい。遅かったわね」

と、寝ずに待っていてくれたらしい麻美が出迎えてくれたのだった。

「お？驚いたよ。まだ起きていたのか？」

私は麻美にカバンとコートを渡し、ネクタイを緩めながら声をかけた。

「ええ、何だか眠れなくて・・。夕食は食べてきたんでしょ？お風呂沸いてるわよ」

「ああ、風呂に入るかな」


私はまっすぐ浴室に向かい、裸になると浴槽に飛び込んだのだった。

（麻美の奴・・まだ起きていたなんて、罪悪感でも感じているのか？）

私はあれこれ考えながら長湯した。

酔いとのぼせが相まって、私はその場に倒れてしまったのだった。





私はハッと意識を取り戻した。

いつの間にか、自分のベッドに寝ていた。

回りを見ると、妻の麻美、長男、長女の３人が心配そうに私を見下ろしていたのだった。

「あなた、大丈夫ですか？」

麻美が声をかけてきた。

「私は・・どう・・したんだ？」

「お風呂上がったところで倒れてたんだよ」

長男だった。

「だから３人でベッドに運んだのよ」

「そうか、心配けけてすまない。ちょっと長湯をし過ぎたようだ」

「よかった、救急車呼ぼうかと思ったんだよ」

長女だった。

「ああ、すまん、すまん。もう大丈夫だから・・」

私が元気な笑顔を見せると皆が安心したように散っていった。

だが、麻美だけが残っていた。

相変わらず心配そうに私を見詰めている。

「心配かけてすまん。もう大丈夫だから、あなたも寝なさい」

そう優しく声をかけても、麻美は動こうとしなかった。

「どうした？もう大丈夫だよ」

私は再度声をかけた。

その時、私は麻美の目に涙が浮かんでいる事に気付いたのだった。