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第1章 サイト

「えー？あの木村さんが家に来るの？」

娘が素っ頓狂な声を上げて喜んでいた。

木村を我が家の夕食に招く事にしたのだった。

「木村さんて・・あの超イケメンの人でしょ？うわー、嬉しいけど緊張するわぁ」

妻の麻美も一緒になって騒いでいる。

我が家の女達は木村が来ると知って、盛り上がっていたのだった。

ただ一人、長男だけが静かだった。





次の土曜日。

木村がやって来た。

土曜日は隔週で休みになっており、今日が休みだったのだ。

「こんばんは♪お邪魔しまあす♪」

今風のお洒落をした木村は女性なら誰もが憧れる超イケメンだった。

その証拠に娘の麻衣は目を輝かせて、まるでアイドルを間近で見ているかのような反応を見せていた。

「これ、つまらない物ですが・・」

木村がお土産のケーキを妻に渡していた。

「あら、ありがとう！この店のケーキ美味しいのよね♪」

麻美もいつもの何倍もの笑顔で木村を歓迎していた。




「いやー、やっぱり奥さんの手料理は最高ですね。これならお金を払っても惜しくない位ですよ」

夕食を食べながら木村が料理を褒めていた。

「今日は泊まって行けよ。狭い我が家だけど客間はあるんだぞ」

私は木村にビールを注ぎながら言った。

「ありがとうございます。明日は日曜日だし、今日はゆっくり飲みましょうね」

木村は大して飲んでもいないのに酔ったフリをしていた。

今日は“繋ぎ”の為の来訪だった。

木村は獲物を狙う時には事前に下調べをするらしかった。

だから今日は妻の麻美をよく観察し、攻略法を考えるヒントにするのだそうだ。

「木村さんて彼女いるんですかぁ？」

私達の話の合間に娘が口を挟んだ。

「彼女？いないよ。何か面倒臭くて・・」

木村は頭を掻きながら笑うのだった。

「えー、彼女いないんですか？私みたいな女の子はどうですか？」

娘がとんでもない発言をした。

「アハハ、イイね。可愛いし、明るくて元気だしね」

木村は当たり障りのない答えをする。

「キャー！私も早く歳を取って大人になりたいなぁ」

娘のとんでもない発想に皆が笑うのだった。