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義娘のつぼみ〜背徳の誘い〜
第4章 突然の悲劇
 武司と茉由はベンチに座って、手術が無事に終えることを願いながら、ただひたすらに待ち続けた。


 どれだけの時間が過ぎただろうか。

 病院内はあちらこちらが消灯され、薄暗くなっていた。武司と茉由二人のいる待合スペースと、手術室前の通路のみが、照明に照らされていた。

 茉由もさすがに疲れたのだろう、武司の肩にもたれかかって眠っている。周囲は物音ひとつせず、彼女の寝息だけが微かに聞こえていた。

 武司も疲労が限界に達していたが、目だけは冴えていた。とても居眠りが出来る心境ではなかった。彼はもたれかかる娘の肩を支えながら、ゆっくりと彼女の身体を横たえ、自分の膝にその頭を載せた。

「――ママ」

 茉由の口から声が漏れる。起こしてしまったかと武司は思ったが、彼女は熟睡したままだ。寝言だった。武司はそっと娘の髪を撫でる。

(大丈夫。茉由のママはきっと助かる)


 武司がウトウトし始めたころ、ようやく『手術中』のランプが消えた。壁の時計は夜八時を回っていた。

 手術室の扉が開き、中から薄いブルーの手術衣と手術帽子を身に着けた、三十代半ばくらいの医師が姿を現した。

 武司は茉由の肩を揺すって起こした。

 医師は沈鬱な面持ちで、父娘の元へ歩み寄ると、

「設楽理恵さんの、ご家族ですね?」

 重い口を開いた。

「はい。あの、妻は……」

 武司の声は震えていた。

「――最善は尽くしたのですが、残念です」

 医師は首を左右に振ると、そう答えた。

「わああああっ」

 直後、茉由が泣き崩れた。武司はその肩を抱き、彼女をなだめることしか出来なかった。
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