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義娘のつぼみ〜背徳の誘い〜
第4章 突然の悲劇
2
武司は車で茉由の中学校に立ち寄った。教職員に事情を話して娘を車にを乗せると、雨の降る中を妻の搬送された救急病院へ向かった。
助手席の茉由は俯き、終始無言だった。母親のことが心配でならないのだ。
「きっと大丈夫だ。お母さんが死んだりするものか」
娘に声を掛ける武司。だが、それが気休めに過ぎないことは、彼自身が一番よく知っていた。
武司は勤め先の会社で、病院からの連絡を受けた。打ちどころの悪かった理恵は、病院に搬送された時点で容態が芳しくなかったという。そのため担当医からは、最悪の事態も覚悟しておいて欲しいと告げられていた。
「絶対? ママ、死んだりしない?」
茉由はボロボロと涙を流しながら訴えかける。武司はその顔を直視するのが辛かった。
彼は一刻も早く、妻の元へ駆けつけたかった。だが、外は大雨だ。見通しも悪い。無理には車を飛ばせない。自分も事故を起こして、茉由にまで大怪我を負わせるわけにはいかない。彼は焦れる気持ちを抑え、車を病院へ向かわせた。
車は夕方の混雑した国道を慎重に走り、ようやく父娘は母親の元へ到着した。二人は手術室へ案内され、近くの待合スペースのベンチに腰を落ち着かせた。
外来診療の受付時間が過ぎているせいか、大きな病院の建物の中は人気(ひとけ)がなく、ガランとしていた。
茉由は手術室の扉を凝視している。両手は膝の上で、制服のスカートの裾を固く握りしめていた。(ママが無事でありますように)そんな、念を送り続けているようだった。
武司は時おりやってくる看護師や、職員の相手で忙しかった。
「こんな時に申し訳ございません」
と言いながら、保険証の提示や、書類への記入を次々に要求してくる。
(なんて無神経な)と、武司は文句のひとつも言ってやりたかったが、彼らとてそれが仕事なのだ。無下にはできない。今はただ、ここの医師に頼るしかないのだ。
一時間ほどが経過したが、扉の上に設置された『手術中』の赤いランプは、未だに点灯したままだ。
気を利かせた年配の女性看護師が、入院患者用の病室の空き部屋を一室用意するので、そこで休むよう提案してくれたが、茉由が頑としてその場を離れようとしないため、丁重に辞退することにした。
武司は車で茉由の中学校に立ち寄った。教職員に事情を話して娘を車にを乗せると、雨の降る中を妻の搬送された救急病院へ向かった。
助手席の茉由は俯き、終始無言だった。母親のことが心配でならないのだ。
「きっと大丈夫だ。お母さんが死んだりするものか」
娘に声を掛ける武司。だが、それが気休めに過ぎないことは、彼自身が一番よく知っていた。
武司は勤め先の会社で、病院からの連絡を受けた。打ちどころの悪かった理恵は、病院に搬送された時点で容態が芳しくなかったという。そのため担当医からは、最悪の事態も覚悟しておいて欲しいと告げられていた。
「絶対? ママ、死んだりしない?」
茉由はボロボロと涙を流しながら訴えかける。武司はその顔を直視するのが辛かった。
彼は一刻も早く、妻の元へ駆けつけたかった。だが、外は大雨だ。見通しも悪い。無理には車を飛ばせない。自分も事故を起こして、茉由にまで大怪我を負わせるわけにはいかない。彼は焦れる気持ちを抑え、車を病院へ向かわせた。
車は夕方の混雑した国道を慎重に走り、ようやく父娘は母親の元へ到着した。二人は手術室へ案内され、近くの待合スペースのベンチに腰を落ち着かせた。
外来診療の受付時間が過ぎているせいか、大きな病院の建物の中は人気(ひとけ)がなく、ガランとしていた。
茉由は手術室の扉を凝視している。両手は膝の上で、制服のスカートの裾を固く握りしめていた。(ママが無事でありますように)そんな、念を送り続けているようだった。
武司は時おりやってくる看護師や、職員の相手で忙しかった。
「こんな時に申し訳ございません」
と言いながら、保険証の提示や、書類への記入を次々に要求してくる。
(なんて無神経な)と、武司は文句のひとつも言ってやりたかったが、彼らとてそれが仕事なのだ。無下にはできない。今はただ、ここの医師に頼るしかないのだ。
一時間ほどが経過したが、扉の上に設置された『手術中』の赤いランプは、未だに点灯したままだ。
気を利かせた年配の女性看護師が、入院患者用の病室の空き部屋を一室用意するので、そこで休むよう提案してくれたが、茉由が頑としてその場を離れようとしないため、丁重に辞退することにした。