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狂愛の巣窟 〜crossing of love〜
第10章 【狂愛の巣窟〜ラスト・シーン〜】





たくさん胸をポカスカ叩いた。
抱き寄せる腕も押し退けて拒んだ。
弱い力だから呆気なく腕の中に収まってしまうけれど。




「好きだよ、十和子さん」




暫く一颯くんの腕の中で泣いた。
落ち着くまでずっと背中を撫でられて髪にキスされて。
少しの間、眠ってしまった。
泣きつかれて眠るなんて子供みたいね。




ハッと気付いて身を起こす。
ティッシュで涙を拭きながら「ごめんね」と距離を取った。
「大丈夫だよ」って優しく微笑む一颯くんをこれ以上はもう。
先を読まれたか「親父が帰って来る前には帰るから」と言われてしまった。




「というより、何処かデートしませんか?家に居ても考えちゃうでしょ?健全なデートを約束するから、十和子さんのことエスコートしても良い?」




確かに、一颯くんの言う通り家に居ても塞ぎ込んでしまう。
外に出た方が気が紛れるかも。
最近、あまり外に出て居なかったから。
「よし、決まり!」って少し強引に連れ出してくれるのも一颯くんの優しさ。




コーデネートも考えてくれて、髪のセットまで。
メイク直しは自分でして運転は一颯くんがしてくれた。
助手席に乗るのも新鮮で良い。




手も繋がない、恋人ではない、付き合うか付き合わないかのギリギリを攻めたデートだった。
周りの女の子がチラホラと見てる。
そうか、そうだよね。
一颯くんって本当は凄くイケメンで背も高くて目立つ。
そんなの気にもしないで「十和子さん」って笑顔で呼ぶから。
どんな目で見られてるんだろうね、私たち。




保護者?付き添い?
考え事してると顔を覗き込んできて
「ちゃんと僕を見てくださーい」って茶化してくる。
向き合おうとしないのは失礼に当たるのかな。




「はーい」と返事すれば目尻にシワ寄せて笑う。
誰も私たちが義理の親子だなんて知らないよね。
見えない………と思う。
まだこんなにキミは私を想ってくれている、それが痛いほど伝わってくるから。




“もう終わりにしよう”と一言、言えば済むのに口から出て来ない。
流されて押し切られて、まるで自我を持たない。
どうすれば良いのかちゃんと答えが出ていないから。
ダメだ、考えるとまた泣けてきちゃう。








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