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第3章 オフィスメイド　森本　沙織

　ロンドンの投資銀行の幹部数名との打ち合わせは、土井が英語を用いて調整役となり、社員の森本沙織が、柳原らの耳元で同時通訳を務めて、円滑に進み、日付が変わる頃に終了した。ミディアムボブの髪に愛くるしい目をした沙織は、長身で、清楚な白シャツと紺のタイトなミニスカートの制服が、小ぶりながらも形の良い胸や、すらりとした尻の曲線を際立たせている。

　沙織が、柳原家の弁護士、税理士を見送りに行っている間、会議室に残った柳原は、土井の顔を覗き込み、感心したような口調で言った。

　「いつもながら、沙織ちゃんの通訳は素晴らしいね。お陰で、複雑な＜金＞の先物市場や、裁定取引の内容も良く分かったし、いちいち通訳の間を空けないから、会議時間も短くて済むね。」

　「私も、ニューヨークで鍛えられたので、英語での交渉は苦にしないんですが、分かりやすく日本語に置き換えてお伝えするというのは、また違った能力と思います。彼女は、両親を知らずに、神戸聖母愛育院で育ったんですが、そこのシスター達から熱心に英語を習っていたうえに、入社して６年ほどですが、金融関係の専門英語もよく勉強してくれています。」