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横を向いて歩こう
第7章 まさきとまさか
「展開早っ。」

「まだ恋愛は早かったってことよね。」

事の顛末を話す
あたしのセカンドラブは長くは続かなかった

変わったことといえば
誠とこうしてまた会うようになったこと

前みたいに探ったり未練に苦しかったりはもうなくて
あたしたちは対等に存在を認め合っていた

日曜の昼下がりのうどん屋はそこそこ混んでいて
隣並びで詰めて座る

「幸子ネギ入れる?」

「あ、うん。」


夫婦だったもん
呼吸が合うに決まってる

周りにはどう見えてるんだろ

そんなのどうでも良かった

一緒に居る今が大切

「俺さ、見合いすることになってさ。母ちゃんがうるさくって。」

彼も彼で進んでいるらしい

「頑張ってね。」

「幸子もね。」

同志だった

「誠痩せたね。」

「うーんどうかな。」

会話はあの頃のままだった
あたしたちの生活は確かにそこにあったのだ 
嘘なんかじゃない

残ったのは思い出だけ
一緒に使ってた物は捨ててしまったし

それでも

あたしはこの人を、夫婦じゃない形でこれからも大切にしていきたいと思った

一緒に並んでうどんなんか食べるからかもしれない
不意に涙が出そうになるのを堪えた
もう同じ家には帰れない

あたしも前に進まないと

「はー、恋したい。」

「すればいいじゃん。」

「それがなかなか難しいのよ。」

「幸子まだ若いんだし。」

「ふふふ、誠は自分の心配なさいよ。」

「おーれは一人でいいや。楽だし。」

そんな言ってる人こそ早いんだから
あたしにはわかる
あたしがいい男に育て上げてきたんだから
引く手あまたに決まっとろぉ


「感謝してね。」

「へ?」

「お見合い上手くいったらそれ、あたしのお陰だから。」

「ははは。高くつくよ。」

「えー。」


笑っていよう
笑うしかないこともある
知らない方がいいこともある
未来なんてわからないんだし



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