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恍惚の日々
第5章 脱皮
「おいで、かなえ。」

かなえは、桐谷のとても柔和な笑顔につられ、よろよろと近づいていった。

目の前に桐谷が居る。
両手を広げ、かなえを待っている。
その胸に抱きしめられる……
見上げれば、笑顔がそこにある。

嬉しくて嬉しくて、涙が込み上げては零れる。
言葉など要らない。ただ見つめ合うだけで、この身が蕩ける……

背中に桐谷の手の温度を感じる。力強さも身に沁みる。

桐谷の顔が近づいて、かなえの心臓は物凄い速さで動いた。


柔らかい唇がかなえの息を止める…

ンッ…

ねっとりと舌を絡ませてくる。
吸い上げ、歯をたてる。

前のキスと違う、犯されてるようなわがままなキス…

舌を抜かれると思うほどに吸い上げ、切れると思うほどに歯をたてる。

抵抗出来ない口からは、ダラダラとよだれが垂れ落ち、蕩ける感覚はなく、耐えるしかない。


不意に髪を掴まれ、天井を仰ぐ。上を向いたまま、口を開けさせる。
桐谷は、開けさせた口に、自身の唾をタラタラと落としてきた。

「美味しく飲め。」


ブルリと震え、ゴクリと飲み込んだ。

「もう一度。」

繰り返し繰り返し、その行為が続く。


かなえに変化が現れてきたのは、繰り返し行われる、その行為の最中だった。


目が虚ろになりはじめた。
ストールを剥がされ、丸裸になっていることも判らなくなっていた。

桐谷は、わざと、口から外れ、下唇の僅か下に唾を落とした。

顎を伝い、流れ落ちる唾液に、かなえが反応した。
虚ろに桐谷を見上げるかなえが、明らかに身悶えている。


「もっと淫らになっていいんだよ。」

桐谷が小さく小さく囁いた。




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