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ある冬の日の病室
第1章 裏切り
  その日三本目スタートを切り、僕は滑り始めた。僕は自分の滑りに満足していた。一本目と二本目は、間隔があいた分様子を見ながらの滑走だったが、三本目は自分の滑りたいラインにしっかり乗ることが出来て、それにスピードも本当の上級者のように出ていた(これがまずかった)。
 ところが、信じて滑っていたラインの雪面が思っていた以上に荒れていた。僕は上級者を気取ったスノーボード三回目の初心者だ。慌ててしまった。その気持ちが僕の体を氷のように硬くし、ボードに伝えてしまった。僕はお尻からコケることが出来ずに、手を付き転倒をしてしまった。左の手首と左肩に強烈な痛みを感じた。次の瞬間経験したことがないような吐き気が僕を襲った(多分僕は白いゲレンデに吐しゃしたと思う)。覚えてるのもここまで、次に目を開けた時に見えたのは、病室の天井だった。
「お目覚めですか? お坊ちゃま」
「……」
 耳障りな声に嫌味な台詞。僕はその声の方に目だけを向けた。銀縁の眼鏡をした看護師と目が合ってしまった。私ってつまらない女のよ、というオーラをまき散らしているような看護師だった。万が一この看護師が自分の初体験の女だったら(絶対に思いたくはないが)、僕はその記憶を永遠の闇の中に投げ捨てる(スピードガンで測定できないくらいの速さで)。
「いるのよね、あなたみたいなド素人が女の子にもてるために、自分の技量もわからずに上級者ぶる人間が。あーやだやだ。この冬あなたで二人目よ。あなたが退院して二日か三日たてば、そのベッドは、また軟派な自称上級スノーボードダーが占領することになるわ。もううんざりよ」
「……」 
 もううんざりよ、と、この看護師に返したかったが、声を出すのが馬鹿馬鹿しかった。仮に僕が何かを言ったら、その何十倍もの皮肉を聞かなければならなくなるだろう。それだけは御免だ。
 左の手首と鎖骨骨折、全治……何日だったろうか? 人生初めての入院生活が始まった。
 翌日東京から母親が来た。「このバカ息子」という見舞いの言葉を残して三時間後に帰った。そしてのその翌日は、山名と権藤がやって来た。二人は時折僕を指さしながらゲラゲラ笑って、母が持ってきた果物を平らげて帰って行った。
 僕は自分に誓った。東京に帰ったら実家暮らしを止めて一人暮らしを始める。そして山名と権藤とは絶交する、と。
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