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カクテル好きの男たち
第2章 最初のお客さま

珠代がバーテンダーとして自立し
一人でカウンター内でグラスを磨いていた。

秀一は心配して
「なにも出来ないけど
傍についていてやろうか」と申し出てくれたけど
スタートから甘えちゃうと
ずっと一人立ち出来なくなる気がして
勇気を出してお断りした。


その頃、秀一は
バーの近くで営業している園川 梓のクラブで
ひとり寂しくグラスを傾けていた。

「秀一…バーを珠代さん一人に任せて大丈夫なの」

太客の接待を終えた梓が
秀一が座っているボックスにやってきて
水割りのおかわりを作りながら心配げに尋ねた。

「一通りのカクテルは作れるようになったからね
ただ…隠居した元マスターの屋敷で
長いこと家政婦のような生活をしてきたから
接客と言う点では不安かな…」

「あなたが付いていてあげればいいじゃない」

「ダメなんだってさ、
あいつ、ああ見えて意地っ張りだから
一人でやると決めたからには
俺に顔を出すなと言うんだよ」

「まあ、何事も経験ですものね
あなたも最初は、そりゃあ酷かったわよ」

そう言いながら
梓は「私も一杯いただくわね」と
自分の水割りをこしらえ始めた。

「まあ、何はともあれリスタートに乾杯ね」

チン…

二つのグラスが重なりあい
心地よい音を立てた。



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