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カクテル好きの男たち
第2章 最初のお客さま

「何を召し上がります?」

「やだぁ~珠代さんったら…
秀一さんなら客の雰囲気を察して
似合うカクテルを勝手に作ってくれたわよ」

「えっ?そうなの?
じゃあ…私もチャレンジしようかしら?」

「そうそう、何を作ってくれるのか
それを楽しみに来たんですよ」

香川健斗は交番勤務らしく
人懐っこい声で笑顔をみせた。

白バイ隊員を目指す豊田礼二は無口で
お手並み拝見とばかりに
珠代をジロジロと見つめている。

「じゃあ…」

秀一に教えてもらったカクテルの中でも
一番得意なカクテルを良美に差し出した。

「ピンクレディよ
その名の通り『いつも美しく』という
そんな意味があるの」

「やだぁ~、美しいだなんて…」

制服を着ている時の彼女は凛々しいが
こうやって私服のときは
年相応の可愛らしい女性だった。

「じゃあ、僕は何かな?」

香川健斗が瞳をキラキラさせて
珠代の手つきを眺めていた。

「あなたはねえ…」

珠代はフルーティーなトロピカル風のカクテルを
香川の前に差し出した。

「スコーピオンです
『瞳で酔わせて』というカクテル言葉があるんです
あなた、とても瞳が素敵だわ
見つめられたら酔わされそうよ」

「へえ~、『瞳で酔わせて』だってさ
良美、俺に酔わされてみるかい?」

「悪酔いしそうだわ」

軽くあしらわれて香川は膨れっ面をした。

「私なら酔わされてみたいわ」

もちろんお世辞なのだが
言葉にしてしまうと本音のようで
香川の瞳を見つめている珠代は頬を染めた。

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