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第4章 運転免許返納の男

「では、噂に違わず
私がお客さまにお似合いのカクテルを
作らせていただきます」

珠代がシェーカーを振るのを
老人は楽しげに見つめていた。

「エバーグリーンです
テキーラベースの鮮やかなグリーンの見た目で、
クレームドミントグリーン、
ガリアーノ、パイナップルジュースをカクテルした
さわやかな飲み口が特徴です
カクテルにはカクテル言葉というのがありまして
このエバーグリーンには『晴れやかな心』という
そんな意味があるんです」

「晴れやかな心？」

「どうぞご家族のためにも
勇気をもって免許証を返納してくださいな
事故を起こしてからでは大変ですもの
そのカクテルのように
晴れやかな心で新たなステージを
切り開いてください」

「新たなステージ…ねえ…」

呟きながら老人はカクテルを一口飲んだ。

「こりゃまた見た目以上に
アルコール度が強いねえ」

「テキーラベースですから」

「こりゃ私にピッタリだ！
私は温厚そうに見えるけどね
ひとたび衣服を脱いだら
そりゃあもうスゴいんだよ」

体が引き締まっているのかと訊ねたら

「違う違う！アソコだよアソコ…」

酔いが回ってきたのか
老人はやけに饒舌で
証拠を見せてあげようか？と
カチャカチャとベルトを外し始めた。