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混沌の館
第14章 決断
 これまでのメールで千夏の大まかな状況は知っていた。

 現在39歳。プロフィールでは新潟が住所になっているが、実際は長岡に住んでいる。専業主婦で小学生の娘が二人、夫と4人暮らし。日記の内容からも幸せそうな家庭の様子が伺えた。彼女自身も裕福な育ちで、親の愛情をたっぷり受けて育ったという印象だった。


 サイトでの活動は日記が主で、そこで知り合った友達との交流を楽しんでいた。とても異性との出会いを求めているとは思えず、私とメールアドレスの交換をしてくれた時は、驚いて、何かの間違いではないかと思ったくらいだ。



 その千夏からのメールが、その日はいつもとは違っていた。


 私とキャサリンが付き合っているのではないかと友達が噂している。確かに二人のやり取りを見ていると親密度を伺わせるものがある。もしそうなら自分はキャサリンの友達だし、今の様に私とメールを続けても良いものだろうか?悩んでいる。そんな内容だった。


 千夏は、私とキャサリンの関係に薄々気づいている。もし確証を持つような事になれば、きっと私との関係を断とうとするだろう。それは、私にとっては耐えられない事だった。

 既に千夏とのメールは私の生活の一部になっていた。今さら千夏がいない生活など考えられない。かといって、千夏と実際に会える訳でもない。何より、千夏は私を単なる友達としか思っていないだろう。


 現実に付き合っているキャサリンを袖にして千夏に想いを告げたところで、到底報われないだろう。



 メールを読んだ私は頭を抱えた。




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