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想い人
第8章 【続】第三章・勘違いの想い人
ガバッと勢いよく身体を起こした美空。

一気に顔色が悪くなり、慌てて両手で口を押さえた。

「美空…」


「うぇ〜〜〜」

そのままトイレへと駆け込む美空。

トイレからは、ひっきりなしに水を流す音が聞こえてきた。


「あー、全く…」

呆れたような美空の母親の声とため息。

そして、俺の方へと振り返った。


「仕事中なのにごめんね。後は私が看るから」

「でも…」

「美空も、大好きな透也くんにはあんな姿を見られたくないだろうし、音も聞かれたくないだろうしね」

今だ止まないトイレからの流水音が、母親の言葉を裏付けている。


「そう…ですね……失礼します」

美空に向けて、お大事にとだけ伝え、俺は美空の家を出る。


美空が妊娠に気付いているのか……

いつから気付いてたのか……

父親への挨拶に過剰に反応したのは何故か……

俺の中では、今は聞けない疑問が積み上がっていた。

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