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あの海の果てまでも
第4章 新月の恋人たち 〜新たなる運命の扉〜
「…あぁ…そんな…も…う…」

…暁の蜜路は相変わらず狭く熱く…大紋の牡を絞り込むように締め付けた。

「…っ…!
…相変わらず…狭いね…」

大紋は凛々しい眉根を寄せ、快楽を遣り過ごす。
そうでないと、あっという間に悦楽に達してしまいそうになるからだ。

…獣の体位、暁は華奢な腰を従順に男に掲げ、その白く透き通るような身体は、快楽に酔う小舟のようにゆらゆらと揺れ出す。

「…あ…あぁ…い…い…」

その薄桃色の形の良い口唇からは、唄うような濡れた声が漏れ出す。

暁ほど、昼と夜の貌が違う人間はいない。
昼間は如何にも清楚で慎ましやかな美しい青年然としているのに、いざ夜の褥に入ると、さながら妖艶で淫らな娼婦のように乱れ、艶やかな声を上げるのだ。

…寝室は熟れた花のような南国の秘密の果実のような甘美な麻薬的な薫りに満たされていた。

…暁の身体から発する甘く人を酔わせる薫りは、まさしく阿片のようだ。
人を夢中にさせ、それなしではいられなくさせる。
…この身体に溺れ、耽溺した過去を大紋は思い出す。
そして、別れていた間の身体と心がばらばらになるような喪失感と焦燥感も。

暁と別れたあと、大紋は肉欲を失っていた。
絢子に対して愛情を感じても、暁に感じたような身体中焼けつくような激しい欲望や欲情を感じた事はなかったのだ。

夜の営みは、辛うじて行った。
絢子が子どもを欲していたからだ。

…今となっては、それが彼女にとって良かったのか分からない。
分からないと傍観者のように思う自分は酷い男だと思う。
けれど、それが真実なのだ。

自分は絢子に肉欲を、性欲を抱けなかった。

その身体のすべてを奪い尽くし、食い尽くし、一体となりたいと、心底願い、思い続けたのは、やはり暁だけだったのだ。

…その恋焦がれた暁は、今、この腕の中にいるのだ。
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