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あの海の果てまでも
第7章 秋桜の涙 〜新たなる夜明けへ〜
『…何を仰っているのですか?』
流石の礼也も声に剣が混ざる。
『私は梨央さんを愛しておりましたよ。
初めてお会いした時からずっと…。
梨央さんが素晴らしい淑女になられるのをずっと影ながら見守り続け、お慕いし続けてきたのです』

光の切れ長の冴え冴えとした瞳がきらりと煌めいた。
『だったらなぜ、綾香さんから梨央さんを奪わなかったの?』

言葉に詰まる。
『それは…』
『梨央さんの幸せのため?
そう仰るおつもりなら、貴方は偽善者だわ。
ひとはね、本当に恋してしまったらなりふり構わずにそのひとを追い求めるものよ。
たとえ奪ってでも自分のものにするわ。
醜くて…けれどどうしようもない執愛の塊り…。
それが本当の恋だわ』
…光の傲慢な印象を与える美貌に、一瞬切なげな色が浮かんだ。
それははっと胸を掴まれるほどに美しいものだった。
思わず見惚れている礼也に、光は静かな口調でしみじみと告げた。

『…貴方は優しいのではないわ。冷たいのよ。
…梨央さんを愛しているのではなく、貴方自身を一番愛しているのよ。
だから、貴方自身の誇りを守る為に梨央さんから身を引いたのよ』

…だから…

光の白くほっそりした指が、礼也の頬を優しく撫でた。

『…今度は、本当の恋が出来ると良いわね』

そのまま、光はふわりと黒いドレスを翻し、バルコニーを後にした。

…ゲランのミツコの薫りのみが、礼也に残された…。

…光さん…か…。
なぜ、こんな時に彼女のことを思い出すのか…。
我に帰る礼也の耳に、メイドの興奮した声が飛び込んできた。

「お生まれに…お生まれになりました!
お健やかでお可愛らしいお坊ちゃまでいらっしゃいます!
奥様もお元気でいらっしゃいます!」

「…良かった…!」

絞り出すようにそう漏らすと、白戸は声を押し殺し静かに泣いたのだ…。

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