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あの海の果てまでも
第7章 秋桜の涙 〜新たなる夜明けへ〜
絢子の寝室に入ると、真っ白なおくるみに包まれた赤ん坊が目に飛び込んで来た。
赤ん坊は寝台に横たわる絢子に大切そうに抱かれていた。
絢子は相変わらず透き通るような白い肌をしていたが、顔色は悪くはない。
清潔な白い夜着に髪を綺麗にひとつに纏め、肩に垂らしている姿は健やかさに溢れていて、礼也は一先ず安堵した。

おくるみに包まれている赤ん坊は血色の良い顔色ですやすやと眠っていた。
生まれたばかりなのに目鼻立ちが整った美しい赤ん坊だ。

「綺麗な赤さまですよ。
…奥様似でしょうかねえ。
お小さいながらお鼻が高くて、きりりとしたお口元をされて…」
遠慮勝ちな家政婦の声に、絢子が小さいながらもしっかりした口調で答えた。

「…いいえ、旦那様に…春馬様にそっくりですわ…」
礼也と眼が合う。
絢子の潤んだ瞳が誇らしげに、輝いていた。

「そうさ。旦那様にそっくりさ。
こりゃあ男前にお育ちになること間違い無しさね。
楽しみだね、奥様」
産婆の志麻が快活に笑った。

礼也は思わず絢子の寝台の傍らに跪き、その白くか細い手を取り握りしめた。

「絢子さん。本当によく…よく頑張りましたね。
こんなにも健やかで美しい赤ちゃんを…お一人でよくぞご立派に産んでくださいました。
春馬に代わり御礼申し上げます」


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