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あの海の果てまでも
第4章 新月の恋人たち 〜新たなる運命の扉〜
…結局、引き受けてしまった…。

街はすっかり夜の帳に覆われていた。
英国の陽は落ちるのが早い。
ガス灯の灯りが辺りを柔らかく照らしている。
周りは帰宅の途に着く人々でやや慌しい。

暁は、家路に続くベイカーストリートの石畳みをゆっくりと歩きながら、思わずため息を吐いた。
嫌なのではない。
務まるか不安なのだ。
…でも…

『…貴方は貴方の世界を広げられることが必要なのではないですか?』
さらりと朱に告げられた言葉が、暁の背中をそっと押したような気もする。

…僕の世界…か…。
何もかも、日本に捨ててきたのだ。
これから、新しい人生を始めるのだ。
大紋に寄り掛かりっぱなしでは駄目なのだ。
自分の足でしっかり立たなくては。

暁は頷いた。

…少し先に、暁と大紋の住まいのテラスハウスの窓の明かりが小さく見えた。
それは殊更暖かく、まるで暁の道標のように明るく照らされていた。
暁はほっと息を吐き微笑み、歩調を早めた。

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