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メダイユ国物語
第3章 幕間 その一
        3

 マレーナはオズベリヒが自室として使用している、城内の応接室に通された。

「姫君の方から会見を希望されるとは光栄です。どのようなご用件でしょう?」

 ソファーに座りながら、彼は相変わらずの薄笑いを王女に向けた。

「お母様は、王妃はどこです」

 今日処刑されたのは国王と政治家の男性のみで、女性の姿はなかった。

「まさか、いずれ王妃も処刑するつもりなのですか?」

 言いながら、マレーナは一歩歩み出ようとする。だが、オズベリヒを護衛する兵士が、彼女の肩を掴んでそれを制した。

「早合点されては困ります。王妃様を罰するつもりは毛頭ございません」

「本当ですか?」

 オズベリヒの答えに、マレーナは希望を見出す。

「ええ。王妃様にはまだ役立ってもらわねばなりません」

 彼はそう言うと、テーブル上の酒瓶を手に取り、グラスに琥珀色の液体を注いだ。

「それなら、一度で構いません。お母様に会わせてください」

 王女は立場を忘れて頭を垂れる。

「お願いです」

 彼女は必死だった。

「残念ですが――」

 オズベリヒは口に運んだグラスを傾けると、

「それは出来かねます」

 無情にも、彼は拒否した。

「何故です? どうして……」

 涙をこぼしながらその場に崩れ落ちるマレーナ。

「今はまだ理由は申し上げられません。ですが、いずれお会いいただく機会を設けましょう」

「本当ですか?」

「私は嘘は申しません。お約束します」

「――分かりました」

 オズベリヒの言葉に、マレーナは顔を上げて彼に向けた。

「その時が来ましたら、お声をお掛けします。……お連れしろ」

 彼は従者に指示を出した。

「もうひとつ――」

 マレーナが続ける。

「ウェンツェル・デグリエートは、お父様とお母様をお守りしていた近衛隊の隊長はどうなりましたか?」

 もうひとつ気掛かりだった、婚約者の行方について尋ねた。

「ウェンツェル? ああ、貴女の婚約者ですか。我々は彼が到着する前に、国王と王妃をあの塔から連れ出しました。私は彼と顔を合わせておりません」
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