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メダイユ国物語
第4章 非情な実験
「今度は泣き落としですか? 残念ですが、その願いを聞き入れることは出来ません。こんな機会は滅多にありませんからね」

 言いながら、彼は扉のノブに手を掛ける。するとそこへ、

「……ファニータはそんなことに協力しません」

 とマレーナは声を掛けた。

「ほお? どうしてそう言い切れるのです?」

 オズベリヒは足を止め、彼女の言葉に耳を傾けた。

「ファニータも……彼女も王族に仕える侍女です。辱めを受けるくらいなら、自ら死を選ぶでしょう……」

「彼女が自決するとでも?」

「そうです。使用人も近衛隊同様、王家に仕える者は皆、そう教育されているのです」

「ふむ、それは困りましたね」

「ですから、いずれにしてもこんな実験は行えません。彼女を自由にして!」

 マレーナは微かな希望が見えたと思った。そう、被験者が死んでしまっては実験どころではないはずだ。

「――それならば、彼女にはこう言い聞かせましょう。『お前が我々の指示に従わない場合は、王女を殺します』とね」

「……え?」

 マレーナは絶句した。反論出来なかった。ファニータにそんなことを言ったら、彼女は王女である自分を守るために、身を差し出すほかないではないか。

 もう為す術はない。マレーナの目の前は真っ暗になった。

「さてそれでは、私は実験の指揮を執るためにあちらへ行かねばなりません。貴女はここから観察なさるといい。特等席ですよ」

 そう言い残すと、オズベリヒは部屋を出て行った。

(ううっ……ファニータ……)

 マレーナは床に泣き崩れた。
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