この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
メダイユ国物語
第5章 幕間 その二
「ユゲイアの追手の者か?」

 ウェンツェルは男に剣先を向けながら尋ねた。

「御意。貴方を捕らえることが私共の任務にございます」

「私はそう簡単には捕まらん」

 剣を構え直し、ウェンツェルは男に言う。

「貴方に勝ち目はございません。この周囲は我々が包囲しました。全員を相手になさるおつもりで?」

 ウェンツェルは周囲に目をやる。確かにこの男の言うとおり、かなりの大人数を連れて来ているようだ。

「かつての戦争終了後も、私共は武器の扱いや格闘など、あらゆる戦いの術を鍛錬して参りました。平和慣れした貴方がたとは比べ物になりません」

 男は抑揚のない声で語る。感情がまるでないのではと思うほどだ。

「お前たちに捕まって恥を晒すくらいなら、私はここで自決する」

 言いながら、ウェンツェルは剣を自身に向けた。

「マレーナ・イェンネフェルト姫」

 黒尽くめの男はひと言口にする。不意に許嫁の名前を聞かされ、ウェンツェルは動揺した。

「ラバーンの姫君にはもう会えなくてもよろしいと、そう仰る?」

 もう一度マレーナと会いたい――彼が今一番望んでいることである。

「くっ……」

 ウェンツェルは決死の覚悟をするにはまだ若すぎた。彼の心は激しく揺らいでいる。

 その場で長い時間考えた。そしてとうとう彼は決心した。

「分かった……投降する」

 そう言うと、彼は手にした剣を地面に投げ捨てた。そして両手を頭の後ろで組んで跪いた。相手に完全降伏の意思を示す姿勢である。

「賢明なご判断です」

 男はそう言いながら、背後の仲間に目配せで合図を送る。すぐに数人の兵士がウェンツェルの元へやってきて、彼を拘束した。

(マレーナ、また君に会えるのか?)

 ウェンツェルは夜空を見上げる。木々の隙間から覗く、蒼い月明かりが目に眩しかった。
/94ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ