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メダイユ国物語
第6章 小さな慰み者
        3

 王女の私室では、ベッドの端に腰掛けたマレーナが、侍女が戻ってくるのを待ち続けていた。

(パウラは……あの子は今ごろあの少年と……)

 マレーナの脳裏には、二人の裸身が淫らに絡み合う姿が浮かんで離れなかった。彼らはまだそんな行為はしていなかったはずなのに。

(わたしったら、何を考えてるの!)

 思わずそんな想像をしている自分に気づき、彼女は大きくかぶりを振る。

 一国の王女、お姫様――という立場から一歩離れてしまえば、マレーナは性への興味が尽きない思春期まっただ中の、十六歳の少女なのである。好奇心が抑えられないのは仕方のないことだった。

 淫らな想像など払拭しなければ……そう思うほどに、彼女の頭の中には先ほど目の当たりにした映像がフラッシュバックする。

 パウラに身体を重ね、彼女を犯す大柄な兵士の逞しい筋肉質の背中が、そして緊張のためかすっかり萎えていた少年の股間の男性器が、さらには先日の醜い獣に蹂躙されながらも激しい善がりを上げるファニータの姿が、次々と思い浮かぶ。

 次第にマレーナは、あの非人道的な人体実験を見せつけられたあの時のように、再び下腹部からジワリと痺れたような感覚が込み上げてくるのを感じていた。

(パウラに代わって自分が少年の相手を務める)

 オズベリヒに向けて大見得を切ったあの時、もし彼が断らずに承諾していたなら――マレーナは自身の肉体が男に抱かれている姿を想像、いや妄想していた。時おり頭をもたげる、自己嫌悪に苛(さいな)まれながら。

 そうか――マレーナはふと、何故このような気分になってしまうのか、心当たりに気付く。

 彼女の生理――月経周期はとうに迎えていなければならない頃合いだった。だが、この数日の間に身の周りで起きた様々な出来事が精神的なストレスとなり、女性ホルモンの働きを狂わせていた。つまり、生理が遅れていたのである。

 生理前は性欲が増す――学術的に正しいのかは諸説あるらしいが、マレーナもそんな俗説を聞いたことがある。

(そうよ、そうだわ。きっと「月のもの」が近いから、こんなことばかり考えてしまうんだわ)

 人間の、生物としての生殖本能に関わる現象である。抗えないのも無理のない話だった。

(そう言えば――)

 そしてもうひとつ、これらに関連してマレーナの脳裏にある事柄が去来する。
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