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メダイユ国物語
第6章 小さな慰み者
        7

 そして、パウラが少年との二度目の夜を過ごした、その翌朝だった。

「マレーナ様……私……」

 手洗いで用を足し、王女の私室へ戻ってきたパウラの顔色は真っ青だった。マレーナは只事ではないと、彼女の元に駆け寄る。

「どうしたの? 何があったの?」

「私は、パウラは死んでしまうのでしょうか?」

 え? とマレーナは訝しんだ。

「何を言っているのです。何があったのか、詳しく聞かせて」

「私……病気のようです。とても重い病気……」

 彼女は恐怖に怯えていた。

「どこか痛いのですか? それとも、お手洗いで戻してしまったとか?」

「いえ……」

 そう言いながら、パウラは震える手で給仕服のスカートをたくし上げた。

 彼女は膝上まで足が見えるように布地を捲くる。

「パウラ、あなた……」

 マレーナは驚きを隠せなかった。

 彼女の足には、右の内腿から足首まで血液の流れ落ちた跡がくっきりと残っていた。

 ようやくパウラに訪れた初めての月経――初潮だった。

「おめでとう、パウラ。これは病気ではないの」

「え?」

 マレーナは侍女の両肩にそっと手を置き、いたわるように言うと、不安を隠しきれない面持ちのまま、少女は主に顔を向けた。

「前にも話したでしょう? これはあなたの身体が大人になった印なのよ?」

 パウラはようやく、自身に何が起きたのかを理解した。途端に不安と恐れは払拭され、胸を撫で下ろす思いだった。

 それと同時に、月のもの――生理で女の身体にどのような現象が起こるのか知っていたつもりなのに、いざ自分の身に降り掛かった途端にそれらが全て吹き飛んでしまい、取り乱した事を心から恥じた。

「マレーナ様、申し訳ございません。お恥ずかしいところをお見せしてしまいました」

 侍女は耳まで赤くしながら、深々と頭を下げて謝罪する。

「いいから、頭を上げて?」

 マレーナは優しい声を掛けた。

「分かってはいても、驚いてしまうものです。わたしもそうでしたから」

「マレーナ様も、ですか?」

「ええ。さっきのパウラの様に、気が動転して狼狽えたものでした――ふふふ」

 王女の見せる笑顔に、パウラも釣られて顔が綻ぶ。

「安心しましたか? それでは、一緒にいらっしゃい?」
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