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青い煩い、少女の情動。
第6章 音楽室とリコーダー

[ふぁーー]
盛りだくさんの一日を乗り越えた私は、お風呂に勢いよく飛び込んだ、緊張した身体が思いっきり脱力して、ふにゃふにゃになる。
実は響君と連絡先を交換したことを思い出して、顔もふにゃふにゃになっているのだが、
私には知り得ないことだ。
[疲れたーー]
幸い部活は無かったので
(あったら流石にあんなことはしない)
6時間目の後、私は普通に自宅へ直帰した。
リコーダーを持って帰って練習をしようと思ったのである。今日はたまたま響君に助けてもらったが、いつまた私が矢面に立たされるかわかったものじゃ無い。
せめてその時までには辛うじて吹けるぐらいにはなっておきたい……。
[よし!]
私は気合いを入れて、湯船から飛び出た。
お湯がざぱーと怒りを告げたが、私はそれを無視して、身体を拭いて、服を着て、髪を乾かして、バタンっと自室に入った。
そしてリコーダーをケースから取り出した瞬間、
精神が崩壊した。
私が手に持つリコーダーには名前が彫ってあったのだ。それ自体はなんら問題はない。小学校でリコーダーを購入したとき、皆んな名前入りのリコーダーを買うからだ。
問題はその名前である。
本来ならば、凡庸な彫りで若宮莉央と書いてあるべきところ、なんとそのリコーダーには都野響と彫ってあるのだ。別にこれは、名前を彫る機械が私のリコーダーに間違えて響君の名前を彫ったわけではない。
これが意味するのはつまり、私が間違えて響君のリコーダーを持って帰ってしまったということだ。
まずは焦りが、次に不安が、そのあとは逡巡が私の全身を駆け巡る。
響君はリコーダーを持って帰っていないだろうから、リコーダーを取り違えてることには気づかないだろう。
後から考えればその思考が良くなかった。
すぐにラインで、リコーダー間違えるっ!って伝えるべきだよね。でも、響君気付いてないし、今なら……。
ここで取り違い指摘すれば、私の過失で事が済む。
しかし、よく考えてみるとこれはまたとない絶好の機会なのでは?
そこまで考えて、私は考えるのをやめた。
理性の天使と誘惑の悪魔が喧嘩していたのは一瞬で、私はいとも簡単に悪魔に傾倒した。

