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それぞれの後編
第9章 サディスティック・マリッジ〜第四章・夏〜【仲直りの仕方】
「あったぁ!」

暫らくして、資料室に飯村の気の抜けるような大声が響いた。


「全然関係ない所に紛れてたなんて…見つかってよかったぁ」

「ホント、間に合ってよかったよ」

飯村の嬉しそうな表情に、愛里咲の頬も自然と緩む。

そんな愛里咲を、飯村がジッと見つめた。


「愛里咲さんは表情が豊かですよね」

「…そう…かな?」

愛里咲を見つめたまま視線を逸らさない飯村に、愛里咲は気恥ずかしくて俯く。


「それに、わかりやすいです」

「え?」

「琉先輩を泣きそうな顔で見つめてばかりいる。まだ喧嘩中ですか?」

「……うん……」

無邪気な笑みで聞かれると、つい正直に答えてしまう。


昨晩のあれは夢だったのだろうか?

今朝起きれば、琉はいつものように、愛里咲とは反対側のベッドの端っこで寝ていた。


俯く愛里咲の顎に、飯村の手が伸びてくる。

「愛里咲さん…顔…見せて……」

言葉と共に、グッと持ち上げられる顔。

「はっ…すげーヤバイ顔してる……」

眉を下げ、うっすらと涙を浮かべる愛里咲の顔を、飯村は満足げに眺めていた。

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