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それぞれの後編
第20章 サディスティック・マリッジ【あとがきのあと】
結婚式から数日後──
琉より早く仕事を終えた愛里咲の姿は、下へと降りるエレベーターの中にあった。
冷蔵庫の中の残り物を頭に浮かべて夕飯の献立を考えていた愛里咲は、途中の階でエレベーターが止まり人が乗り込んで来たことに気付き慌てて『開』ボタンを押す。
「何階ですか?」
乗ってきたのは中年の男性。
二人きりのエレベーターは気まずくて、それを振り払うように愛里咲は満面の笑みを作りその男性を見た。
「──……ふっ、副社長⁉︎ 」
そこにいたのは、琉と仲の良いこの会社の副社長。
琉と仲が良くても、愛里咲にとっては遠い存在。
一気に緊張が走る。
「ちょうど良かった。はい。千葉くんに結婚祝い」
御礼を言って受け取った漆黒の包みを、愛里咲は訝しげに眺める。
思い出すのは、琉が副社長にもらった結婚祝いの品……その夜に初めて知った快楽……
「こっ、これは! 中身は? ──っ!」
半泣き顔で副社長を見上げた愛里咲は、琉の悪魔の笑みよりも真っ黒な、副社長の大魔王の笑みに凍りついた。
「夏川くんが、津川くんに極太なんてプレゼントしてくれたから、手懐けるのに苦労してね。その、仕返し」
お祝いの品を持つ愛里咲の手がガタガタと震える。
「あの…っ…あの……っ、せっかく…です…けど……その……」
大魔王にお返しの返品なんて出来るのだろうか。
でも、これを持ち帰ればあの悪魔の笑みに何をされるかなんてわかり切っている。
(どうしよう……)
ジワリ、ジワリ…
浮かんでくる涙を、愛里咲は唇を噛んで堪える。
そんな愛里咲の顔を、副社長は愉しげに見つめていた。
琉より早く仕事を終えた愛里咲の姿は、下へと降りるエレベーターの中にあった。
冷蔵庫の中の残り物を頭に浮かべて夕飯の献立を考えていた愛里咲は、途中の階でエレベーターが止まり人が乗り込んで来たことに気付き慌てて『開』ボタンを押す。
「何階ですか?」
乗ってきたのは中年の男性。
二人きりのエレベーターは気まずくて、それを振り払うように愛里咲は満面の笑みを作りその男性を見た。
「──……ふっ、副社長⁉︎ 」
そこにいたのは、琉と仲の良いこの会社の副社長。
琉と仲が良くても、愛里咲にとっては遠い存在。
一気に緊張が走る。
「ちょうど良かった。はい。千葉くんに結婚祝い」
御礼を言って受け取った漆黒の包みを、愛里咲は訝しげに眺める。
思い出すのは、琉が副社長にもらった結婚祝いの品……その夜に初めて知った快楽……
「こっ、これは! 中身は? ──っ!」
半泣き顔で副社長を見上げた愛里咲は、琉の悪魔の笑みよりも真っ黒な、副社長の大魔王の笑みに凍りついた。
「夏川くんが、津川くんに極太なんてプレゼントしてくれたから、手懐けるのに苦労してね。その、仕返し」
お祝いの品を持つ愛里咲の手がガタガタと震える。
「あの…っ…あの……っ、せっかく…です…けど……その……」
大魔王にお返しの返品なんて出来るのだろうか。
でも、これを持ち帰ればあの悪魔の笑みに何をされるかなんてわかり切っている。
(どうしよう……)
ジワリ、ジワリ…
浮かんでくる涙を、愛里咲は唇を噛んで堪える。
そんな愛里咲の顔を、副社長は愉しげに見つめていた。