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それぞれの後編
第22章 うちのむぅがドSなのか口が悪いのか微妙な件【2017】
無理無理無理無理〜っ!

だけど、唇が触れそうで触れないこんな状態のままは嫌だ!

じ、自分から、しちゃおうか?

薄目を開けて、蘭は唇同士の距離を確認する。

だけど、その瞬間、むぅの意地悪な瞳に囚われかけて、慌ててまた瞳を閉じた。


「む、むぅ!き、き、き、き……」

顔が、頰が、耳が、熱い。

恥ずかしさに小さくなっていく声に反比例して、心臓のドキドキは大きくなっていく。


「き、キス……したい……です……」


精一杯の勇気、届いた?ちゃんと、むぅに聞こえた?

重ならない唇。動かないむぅ。ううん、なんだか距離が離れてしまった気がする。

不安になって、ゆっくり目を開けた蘭の目の前で、

「〜〜〜〜〜〜っ」

蘭よりも、赤く紅く顔を染めて、俯いた顔を立てた膝に埋めるむぅ。


「蘭!散歩!外行くぞ!」

蘭の顎を離れたむぅの手は、蘭の手を掴んで引き起こす。

そのまま家の中を手を引かれて歩くと、蘭から見えるむぅは後ろ姿。だけど、真っ赤な耳がしっかり見えて、蘭の顔は笑みが溢れる。



梅雨入りしたとニュースで言っていたのに、今日は朝からいいお天気だった。

すっかり日の落ちた夜空には星が瞬き……

「綺麗な満月♡ 」

そういえば、テレビでやってた。

今日は ”ストロベリームーン” だって。苺みたいに紅く見えるんだって。

「むぅ!お月様……っ!」

不意に重なった唇は、お喋りな蘭の言葉を簡単に奪い取っていく。

赤い月の下、赤い顔の2人の重なった唇は、互いを深く求めあう。

呼吸が乱れて、悲しくなんてないのに涙が溢れてきて、唇が離れる頃には寂しくなって身体を寄せてしまう。



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