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君の愛に酔いしれて溺れる
第7章 優しい彼が獣に変わる瞬間 前編



2年前 彼と初めて出会った夢を見た。

「龍さ...ん?」
彼女は寝言でそう呟くとゆっくり起き上がった。

「夢か...」
見慣れた部屋の天井を見上げ欠伸をかいた。

「美夢ちゃん」と呼ぶ声と寝室のドアを叩く音がした。

「おはよう、龍さん」
彼女はドアを開けて彼に挨拶を交わした。

「おはよう、美夢ちゃん。俺、仕事に行くからじゃあね」

「う、うん。行ってらっしゃい。今日も頑張ってね」

彼女は微笑んで彼を見送った。

**************

 陽の当たらない薄暗い部屋で彼女は小説を書いていた。

彼女が書いた作品は出版すればベストセラーになり天才だと謳われているが自身は平凡だと
疑わなかった。パソコンで何度も文章を消して
書くの繰り返しの苦悩の末、彼女の作品は生まれる。

「全然集中出来ない」
彼女は自分の頭を掻きむしって机に顔をうずくめていた。

「 美夢ちゃん、お互いに忙しいし一緒に住もうよ。」

「えっ?」

「嫌かな。一緒に住んだ方が過ごす時間が増えるでしょ」

「嫌じゃないけど、週刊誌とかにバレない?」

「あぁ...そこら辺は心配しなくていいよ。
俺は美夢ちゃんと一緒に住みたいけどな。」

彼女の意識が遠のいて彼との記憶が呼び起こされた。


「一緒に住むからって別に過ごす時間が増えるわけじゃないでしょ」
彼女は虚ろな目で顔を上げて微かな声で呟いた。

彼と一緒に住んで半年間、朝、挨拶交わして
夜は遅く彼女が寝静まる頃に帰ってきていた。

休みの日は 大半は寝ているが体づくりの為
自室の部屋でトレーニングしていた。

彼女が思い描いていたような同棲とは違っており
悶々としていた。

「仕方ない、悩んでも仕方ない。」
彼女は息を吹き返してパソコンを弄り始めて
画面には検索サイトが表示されていた。

セックスレス 原因と彼女は入力した。

視界には文字が一気に支配されてあまりの情報の量に唾を飲んだ。

「レスの原因、多忙、あたしに魅力がないとか。彼に仕事とあたしとどっちが大事とか聞く?
気持ちが悪い」

彼女は息を吸って吹き返した。

「あたしのただの欲求不満でしょ」
そう彼女は呟いてパソコンと再び向かい合った。
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