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ダンシング・クィーン
第2章 啓子
卒業式が終わり 校庭に出ると 生徒たちが駆け寄って来る
写真をせがまれ 一緒にカメラの中に お邪魔して笑顔を
落としていく

声が聞こえた・・・・
私の顔が 強張る 深呼吸一つ 心に言い聞かせる 

・・・頑張るのよ 梨花・・・・

「 先生 」 子犬の様に 尻尾をぶんぶん振って 
栄治が近寄って来る

私は・・ 私は・・・ 私は無理やり 
笑顔を浮かべ 栄治を見て 

「 卒業おめでとう これで お別れね 」

栄治の目が 驚いたように私を見て来る
言いたいことは いっぱい いっぱい 有るけど
後ろを向いて 職員室へ向かった

「 梨花!! なんだよ!!」

栄治 初めて 呼び捨てにして呉れた
私は 止まっては 駄目 職員室に向かうだけ
振り向いたら 涙を 見られるから 
走って来る音が聞こえる

栄治お願い 寄って来ないで お願いだから

「 梨花 何で お別れって言うの ?」

栄治が私の腕を掴んで 顔を覗き込んでくる

「私 今日で先生を卒業 家に帰るの 」

「 栄治 卒業して 大学に行くのでしょう」

「 だから・・今日でお別れね・・元気で 」

精一杯の カラ元気で 満面の笑顔で送ってあげる

「 俺 大学行かない 働いて梨花 お嫁さんにする 」
叱られた 子供の様に拳を握り絞めて

・・・もう・・ 

「 栄治・・ 貴方の事 大好きだった 」
押さえた思いを 口に出して 堪えていた涙が
溢れて来る

「 栄治 大学に行って卒業して 社会に貢献してね 」

最後だな 栄治の瞳を見るの 
栄治が私の目を強く見て

・・・さ・よ・う・な・ら・・・ 心で呟いた

栄治の顏を見られない 涙で歪んで行く
私の心 伝えたい・・・ 

・・・・・・ゴメンネ・・・

私を見つめていた 栄治の手が腕を離して 
体の脇にだらんと落ちて行く

私は 振り向かないで 歩くだけ 
背中に栄治の視線を感じる

振り向きたい
振り向きたい

振り向いたら きっと
栄治の胸に飛び込んで行く 
判って居るから

栄治の視線を振り払い 私は 職員室の中へ・・・・

        さようなら   栄治
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