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Autamoon(秋月夜)
第12章 ルナティックブルー
 ③

 もう、馬鹿みたい…
 なに、一人で勝手に期待してるのよ…

「あの山の峠道の途中にさぁ…
 絶好の観測場所があるんだよ…」

 そんな自分勝手で勘違いな昂ぶりの想いを他所に…
 部長は一人でそのスーパームーンの観測に盛り上がり、夜空にうっすらと見えている、県境の山を指差しながら、峠道へとハンドルを切った。

 そして車は軽快に、峠道を左右に曲がりながらゆっくりと登っていく…

「ほら、着いたぞ」

 山の斜面に面した開けたカーブ沿いの、約自動車三台分程の広さのスペースに車を停める。


「う、うわぁ…」
 すると、正面の夜空には降り注ぐ様な煌めく星々と、青く、蒼く、光輝く、巨大な満月が…
 まるで、手を伸ばせば届くかの様に、夜空に浮かんでいた。


「う、うわぁ、す、すごい…」

 その月の…

 満月の、あまりの巨大さに…

 その青く、蒼く、輝いているその月の光の明るさに…

 心が震え、一気に昂ぶってくる…

 本当に凄く…

 そして、神々しい輝きである…

「月は、月はさ…」

 その月を見ながら部長が囁いてきた…

「月はさ…」

 すごい不思議な魔力があって…

 満月の夜は、犯罪率や、交通事故率が高く上がるんだって…

 それは…

『満月の狂気』

『ルナティック』
 
 等と呼ばれているんだ…

「狂気…ルナティック…」
 わたしはドキドキと高鳴ってきていた。

 なぜならば…

 そう囁いてくる部長の雰囲気が…
 明らかに変わったのが感じられてきたからである。

 ドキドキ…
 心が高鳴り、昂ぶってくる…

 そして視線は、いや、心までもが、この目の前に浮かんでいる
『ブルームーン』
『スーパームーン』に魅了され、魅せられていた。

「そう…狂気…」
 
 あっ…

 部長の手が、膝に置いてあるわたしの手に触れてきた…

「この月の…満月の引力が…」

 人を…

 男を…

 狂わせる…んだ…

 そう囁きながら、キスをしてきた。



 ああ…

 心が震え、とろけてしまう…

 この満月の…

 青い…

 蒼い…

 ブルームーンの…

 青い光に包まれ…

 蒼い光に抱かれ…

 そしてルナティックな狂気に落ちていく…

 
 夏の夜の夢…

 狂気の…

 ルナティックブルー…


 これも…
 
 全部、夏のせい…


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