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花狂い
第5章 恵 2
鶴野が 防犯カメラ無かったはずだと言うと
先週 置き引きが有って
各階 ベンチ回り 映る様に成りまして
女子警備員に野原は顎で
「 あれを 」
警備員は頷いて
モニターに 文具売り場に居る鶴野が映し出された
そこには ボールペンを試し書きする姿が
試し書きをしながら 一本を袖の中に入れる映像が
しっかり映されていた
「 鶴野さん これの説明していただけますか 」
鶴野は 青い顔をして口を固く閉ざし
野原は名刺入れを出して
「 二宮電産総務部長さんですか 」
呟いた
「 申し訳ございません 」
部屋に鶴野の大きな声が響き
机に深く頭を下げて来た
野原は 腕組みをしながら何か考え
鶴野が 顔を上げボールペンは
魔が射しただけだ 弁償する
彼女には近付かない
どうか許して欲しいと 懇願してきた
野原が 一本だけじゃ無いでしょう
気が付いて 彼女に携帯で撮らせたけど
先週から 来る度一本持って帰ってるよね
魔が差すの 毎日
鶴野は 項垂れた
野原が紙とペンをテーブルに置き
「 書いてもらおうか 」
鶴野が顔を上げると
「 ペン 盗んだって認めるの 」
書くのと 野原が言い捨て
何度かの 書き直しの後 書き上げると
サインをさせ 平間には今後近寄らないと書き
サインさせられた
サインが終わった時 鶴野は幾分ほっとした表情を浮かべた
鶴野さんお子さんは 野原が訊ねると
高校と中学の息子が二人と答え
野原は重ねて お金掛かりますね
これ警察に 持って行ったら貴方首ですね今の会社
ご提案なんですが鶴野さん
今度の会社のお中元 もう注文されました?
鶴野がまだだと 答えると
今年のお中元から 当店でお願い出来ますかと
野原が言う
二宮電産は ライバル店の顧客で
高島の店とは繋がりが無い
鶴野が せめて半分と言うと
解りました 半分で結構です
正し年末からは 当店でお願いします
鶴野さんが総務に努めている間はよろしくと
野原は笑顔で頭を下げ
鶴野は店を出て行った
野原は笑いながら
高島に向かって 警察に突き出しても
金に成りませんしねと ウィンクをしてきた