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第6章 陽子

女性は　陽子の手を引くと　建物を出て　細い道を歩き始めた　
暗い通路の　上を覆う屋根に　振り続ける強い雨音を聞き　
足元を照らす常夜灯を頼りに　一つの建物の　
暖簾をくぐり　脱衣所に連れてこられた事に
気が付いた

・・・一緒に　入りましょう・・・

大柄な女性が　服を脱ぎ始め　豊かな胸と白い肌を見て　
陽子も濡れた服を脱ぎ
女性と一緒に　露天風呂に向かった　
掛け湯をした時　冷えた体は　余りの熱さに　体が痺れ
三度程掛け湯をして　ゆっくりと　露天風呂に体を沈め　
初めて深い　溜息を吐きだした

・・・お名前は・・・　大柄な女性が　陽子を覗き込む様に見て聞いて来た

・・・浅野　陽子と言います・・・　旧姓を使い　頭を下げた

・・・私　尾崎　啓子・・啓子と呼んで・・　
陽子の横に　腰かけて　啓子が言う
露天の向こうに頭が二つ見え　陽子を興味深く見つめる目と合った

・・・弥生さんと麗さんも来てたの？・・・　啓子が聞くと

・・・私は　お仕事　弥生はお付き合い・・・　
スリムな体形の麗が　タオルで顔を拭い答えて来た

・・・陽子さん　今夜から私の部屋に泊まるから仲良くして上げてね・・

・・・弥生さんと麗さん・・・　
啓子に二人を紹介され　陽子は頭を下げて　
啓子を見ると優しく見つめて来る啓子の目と合った

・・・あの・・・　陽子が口を開こうとすると

・・・良いのよ・・・　啓子は優しく見つめて言って来た

啓子の瞳の奥を覗いた時　
瞳の奥の暖かな光に触れて　涙が溢れて来た　
頬を涙が零れ　張りつめていた気持ちが　
一度に壊れて　嗚咽が押さえられない
嗚咽を上げ続け　涙を流す陽子を
3人は何も語らず　黙って見つめていた