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ガトーフレーズ
第4章 mousse
あと、六日。
あと六日で、莉乃は24歳になる。
そのとき誰といて、何を思っているのだろう。そう考えて、ふと我にかえり、記憶が巻き戻されそうになるのを必死で堪えた。

男が帰るのを背中で見送り、しばらくぼんやりすると、莉乃は起き上がって帰り支度をはじめた。

(いつも、結局、ひとり)


外へ出ると、季節外れの雪が降っていた。

────あの雪の日。あの腕。
去りし日の抱擁は、まるで泡雪のように優しかった。



春の、木漏れ日の中で
夏の、真昼の太陽の下で
秋の、夕焼けの真ん中で
冬の、朝焼けの端っこで
この空で繋がっている俊太のことを想った。

桜や、くちなしや、金木犀や、梅の香りが、もぎ取るように一瞬で過去へと引き戻した。

温度や、湿度や、香りは、何度でも蘇る。

今感じる痛みは、あの時感じた痛みとまったく同じだった。
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