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君とメメント・モリ
第13章 12月26日 夏美の後悔の矛先
力が入らない両脚をなんとか動かして、凛は出社した。

社屋入り口のゲートの脇で、夏美が凛を待ち構えていた。ゲート手前の化粧室に引かれるように連れられ、洗面台に向かって並んで立つと鏡越しに見つめ合った。

「どうして、言ってくれなかったの、拓斗のお金のこと」

夏美はすでに目の淵が赤かった。上瞼もいつもより腫れていて、昨晩の修羅場がうかがえた。

左手に、光る指輪はなかった。
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