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君とメメント・モリ
第18章 死神の秘密
───地上で生きる二人の男女を、無事に死に送り届けられるかどうか。

それが翼に与えられた試練だった。
成功すれば死神として魂の器と使命が与えられる。失敗すれば再び器を失い、浮遊する曖昧な存在として誰にも認知されない孤独の世界に放り戻される。

チャンスは一度きり、瀬戸際での挑戦だった。

翼は結界を越え、カラスの体を得た。
死神が結界を越えてこの世にあらわれる時には、カラスの体を借りることになっている。

両翼をふた振りして風を抱くと、空を滑るようにして国道を走る赤い車を目指した。

滑空し、目的の二人が乗るその車に近づき、カラスの姿を消して煙のように空気に溶け入ると、車内に入り込んだ。
人間に、死神の姿は見えない。


運転席の男はハンドルを握り、助手席に座った女性と楽しげに話していた。

「誕生日にパパに会えたら、あの子本当に喜ぶと思う」

「シンガポール工場もやっと落ち着いて来たからな。長く留守にしてごめんな」

女は首を左右に振って、久々の夫の横顔をじっと見つめた。

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