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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
「兄貴、こいつは良い獲物に出逢ったみたいだぜ。上玉じゃねえか」
 右側の男が言うと、傍らの男が下卑た笑いを浮かべ頷く。どちらも、いかつい赤銅色の顔をしているが、左側の男は眼許に黒子があるのが特徴的だ。
「おう、ここのところ、検非違使の警戒が厳しくなって仕事がやりづらくなっていたからな。くさくさしてたところだし、丁度、憂さ晴らしに良いか」
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