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ネコの運ぶ夢
第12章 夢幻のネコ
☆☆☆
腑抜けのようになった俺だったが、数日間、なんとか会社には行き続けた。朝霞くんからの報告受けているときにもぼんやりしていたせいか、何度か「課長!聞いてますか?」と叱咤される始末だったが、なんとか、やり過ごした。

「課長、どうしたんですか?この所おかしいですよ」
朝霞くんが心配半分、怒り半分といったふうに尋ねてくる。たしかに俺がこの調子だと彼女に負担がかかる。すまん。

「そんなんじゃ、ネコちゃんに笑われますよ」
音子・・・
「いなくなったんだ」
ぼんやりとしてて、つい、ボソリと言ってしまった。
「え?!」
朝霞くんだけではなく、その後ろにいた庄司くんまで驚きの声を上げる。
「ネコちゃん家出したんですか!?」
「大変じゃないですか!ネコ探偵とか依頼したほうが・・・」
「まずは心当たりを探さないと」
口々に騒ぎ立てる。いつの間にか関係ない山内や木下までも「俺、ネコ専門の探偵調べてみます」などと言い出している。収拾がつかない・・・。

「おい、待て、大丈夫だ・・・。その・・・もともと、野良だったし」
俺が言うと、一旦はピタリと皆話すのをやめるが、すぐにまた騒ぎ出す。

「ダメですよ!だって、課長こんなにしょげてるじゃないですか!」
「一旦飼ったら責任取らなきゃダメですよ」
「事故にでもあってたらどうするんですか!」
「ネコちゃんもきっと課長のことを探してますぅ」
「ネコは家につくっていうから、家に罠を」
「そもそも、課長仕事してる場合じゃないのでは?」
「そうです、薄情ですよ」
「さほど仕事してないんだから帰っても大丈夫っす」

なんか最後の方、酷いこと言われた気がするが、この日は騒ぎを収拾するためにも、時間で休暇を取って帰ることにした。
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