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ネコの運ぶ夢
第13章 家につくネコ
「それは大変ありがたいお話です。上と諮ってみます。ところで、娘さんもその分野に造詣が深くてらっしゃるのですね?息子さん、娘さんとも優秀で羨ましいですな」
「はっはっは。なーに、商売の真似事をしてるだけですがね。娘のほうが観光コンサルタントをしておりますし、中条グループの環境問題部門の顧問のひとりでもある、適任だと思いますな」
「娘さんとおっしゃると・・・確か、静香さん」
わざと、静香の名前を出してみる。

「いやいや、静香ではなく、京子の方ですわ。そう言えば、今日は京子が珍しく家にいたな。おーい、四宮!京子を呼んでこい」
俺の背後にいた黒スーツの男が音もなく動く。あいつ、この前すれ違ったやつじゃねえか?
しばらくすると、お高そうなビジネススーツに身を包んだ明るい茶髪の女性が入ってきた。なかなかの美人だが、目つきがきついので、性格も知れるというものだ。

「おお、京子、こちら市ノ瀬さんだ。市民講座の講師をしてくれということでな。」
「中条京子です。よろしくお願いします。」
京子は俺を見るとすっと目を細めた。初対面、だが、こっちを知っているような目だ。
「いやあ、お美しいですな。この若さで手広く事業を展開しているとなると、尊敬します。妹さん、弟さんもさぞかし優秀なのでしょうね。」
見え見えのお世辞だったが、「あら」と京子は口元に手を当て笑う。笑った顔が一瞬音子に似ているかもと思ったが、気のせいのようだ。どちらかと言うと、見下すようないやらしい笑みだ。似ても似つかない。

「そうですわ!お父様、せっかくですから、静香も呼びましょうか。あの子はこういう場に慣れていないから、ちょうどいいかも知れません」
「ん?そうか?」
京介は明らかに戸惑っていたが、この流れで断るのもおかしいと判断したのだろう、静香を呼ぶことを認めた。
先程の四宮という男が、今度は上品な紺のワンピースを着た女性を連れてくる。
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