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ネコの運ぶ夢
第14章 ネコの秘密
こうして家を追い出された私は宛もなく歩き、市ノ瀬さんの住んでいるアパートの前で動けなくなってしまったのです。本当に途方に暮れて、もう、このまま死ぬんだと、そう思っていました。

でも、そこに貴方が現れました。
そして、私は貴方に拾われたのです。

それからの3ヶ月間は、私にとって夢のようでした。市ノ瀬さんは、たとえそこにいないときでも私の事を気にかけてくれていると、心の底から感じることが出来ました。

一緒にご飯を食べてくれました、
一緒に眠ってくれました、
寂しいときは、抱きしめてくれました、
誕生日を一緒に過ごして、
一緒にお星さまにお願いをしました。

一緒に海に行ったのは本当に楽しかった。

ああ、でも、その楽しかった鎌倉への旅行の時です。覚えていますよね?地元紙の記者さんに写真を撮ってもらいました。それがいけなかったのです。どうやらあの写真が載った冊子を京子に見つけられてしまったようでした。あとは出版元から住所を辿って、あっという間に私がいるところが割り出されてしまったようでした。

私が撮ってほしいと言ったのだから、自業自得ですね。

そうやってアパートの場所が分かってしまいました。ある日、市ノ瀬さんがいない時、アパートに四宮が来ました。「お父様がお呼びです」と。

新しい縁談がある、戻ってこい、と。

私に断る選択肢はありませんでした。私がごねたとしても、中条の家なら、市ノ瀬さんに仇なすことなど、平気でやってのけるでしょう。私が市ノ瀬さんに何かを言えば、やっぱり迷惑になってしまう。だから、黙って出ていくしかないと、その時は、そう思ったのです。
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