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トライ アゲイン
第1章 序章

「こんな簡単な統計処理も出来ないのかね!」

課長のデスクに呼び出されて
薬理課のみんながいる面前で安祐美は課長から叱責を受けていた。

「すいません!本当にすみません!
以後、気をつけますので…」

穴があったら入りたいとはこの事だった。
自分の不注意なのだから叱責は甘んじて受けることも出来たが、薬理課のみんなの前で叱られたくはなかった。

新入社員だったころは
課員のみんなが慰めの眼差しを注いでくれたが
すでに入社三年目ともなると
課員のみんなからは冷徹な眼差しで小バカにされているのをイヤでも感じてしまう。

とりわけ、薬理課の中でも
イケメンで安祐美の意中の男性である小向昭吾さんにだけは失態をさらされたくなかった。

「こんな単純な計算をミスっているようじゃ
今季も君の昇給なんて無理だからね!」

はい、机に戻って計算をやり直しなさいとばかりに
課長はまるで安祐美を追い払うかのようにシッシッと追い払った。

「ドンマイ」

隣の席の小向が
心のこもっていない慰めの言葉を投げ掛けてくれた。

「あの…小向さん、今夜、お付き合いをしていただけませんか?」

今後の仕事について
続けるべきか辞職するべきか彼に相談に乗って欲しかった。

「今夜?ああ…別にいいけど…」

どうせなら晩飯でも食いながら話そうか?

深刻そうな相談に違いないと汲み取った小向は
二人だけになれる個室のある居酒屋に安祐美を連れていってくれた。

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