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トライ アゲイン
第3章 心だけタイムスリップ

午後の授業も全てを覚えていた。

ここで誰が先生に叱られるとか、
一人の生徒が悪ふざけをして女子生徒を泣かせてしまうとか、
周りの皆は新たな人生のページを開いていくのだろうけど、安祐美一人だけ人生を繰り返しているのだった。

「飯島、少し残って先生と話をしないか?」

担任の岡山先生が一日の終わりのホームルームを終えて、帰り支度を始める安祐美を呼び止めた。

『えっ?これって私の記憶にないわ…』

授業中も、まるでDVD映画の再生を見ているような一日だったのに、
なぜか新たなシーンが加えられようとしていた。

「今日の飯島は少し変だったから
先生、気になって仕方ないんだ」

担任の岡山先生がそう言うのも無理はなかった。
安祐美自身だって当時の自分はこんなんじゃなかったという振る舞いや言葉使いなどで
なんだかものすごい違和感を感じていた。

二人だけ教室に残り、向い合わせに座ると
岡山先生は真剣な眼差しで安祐美を見つめた。

「どこか具合が悪いのか?」

「いえ…別に…いたって健康です」

そう、心と記憶だけがぐちゃぐちゃだけれど
体のどこも痛くないし健康そのものといえた。

それからも「家庭で悩み事とかあるんじゃないか?」とか、「交遊関係で悩んでいないか?」等と
思春期の女の子によくある悩みがあるのではないかと岡山先生はカウンセリングをしてくれた。

気づけば下校時間を知らせるチャイムが鳴っていた。

「もうこんな時間か…
いや、遅くさせてすまなかった
ちょっと安祐美の事が心配だったから」

えっ?
なんだろう、この違和感…
岡山先生は安祐美が卒業するまでずっと飯島さんとか飯島と名字で読んでいたはずなのに
まさか下の名前で呼び捨てにされたなんて…
こんなことは記憶にはなかった。
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