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彼女はボクに発情しない
第6章 雨音とキスの追走曲
☆☆☆
『発情』が収まった。

気がつくと、私は陽太の顔に自分の股を押し付けるように座っていた。カッと顔が紅潮する。

また・・・やってしまった。

「よ・・・陽太?」
陽太が苦しいといけないので、急いで身体から降りる。陽太を見て、びっくりした。

身体中がびしょ濡れだ。
そして、顔が真っ赤だ。

陽太は熱があると言っていた。雨の中を走ってきたせいで、さらに熱が上がってしまったのかもしれない。

「陽太!陽太!?大丈夫?」

陽太の目つきがおかしい。朦朧としているように見える。これは状態が悪いのではないだろうか?
ものすごく無理をさせてしまったのではないだろうか?
おでこに手を乗せてさらに驚いた。とても熱い。

こんなになってまで、私を助けてくれたなんて・・・。

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・無理させて、いつもあなたに頼ってばかりで」

どうしよう・・・具合が悪そうだ。どうしたらいいの?
涙が溢れてくる。陽太の具合が悪いのを知っていたのに、発情したら陽太に頼るしかない。本当に、本当にごめんなさい。

ボロボロと涙が止まらない。陽太の顔に涙の雫が落ちる。

「ご・・・めん」

陽太が何か言った。

「何?どうしたの?なんで謝るの?」

「・・・キスさせちゃった・・・」

陽太がすまなさそうにする。

その瞬間、『発情』時の記憶が蘇る。私、後ろから陽太に抱きついて、耳を舐めて、そして、そして・・・

キスを・・・。

自分の顔が真っ赤になるのを感じる。
これは、恥ずかしいからじゃない。
だって・・・私は・・・陽太を・・・。

「大丈夫・・・キスしたのが陽太ならいいの。大丈夫よ・・・」

一生懸命言う。もう、ぐったりして気絶してるみたいだから聞こえていないかもしれないけど、陽太はこんな女、嫌かもしれないけど、私は陽太が・・・陽太が・・・、

いつもいつも、ありがとう。
大好きだよ・・・陽太・・・。
どうか・・・どうか・・・私を嫌いにならないで・・・。

ぐったりと眠るように気絶した陽太をしばらく私は抱きしめ続けた。
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