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エリート妻色情飼育
第96章 第五章 残り香
裕子入社3年目「社長室」
20●0年2月20日 AM 11:30

※※※※※※※※※※※※※※※

「コーヒーをお持ちしました・・・」
声が震えている。

カチャカチャとお盆の上でカップが音をたてるのを裕子は懸命に抑えようとしていた。

秘書として社長室に入るのは初めてであった。
勿論、悟のプロジェクトチームに配属されていた時からも。
巨大グループである秋元薬局の総帥である社長と二人きりで顔を合わすことも当然、初めてだ。

汗かきなのだろう。
しきりとスキンヘッドをハンカチで拭く男は、還暦を過ぎているとは思えないようなバイタリティーを感じさせた。

同時に裕子の嫌悪するケダモノの 匂いも。
実際、さっき部屋を出ていった秘書の濃密な残り香が、裕子の胸を不快にするほどに漂っていた。
明らかにおぞましい行為が、されていたことを証明していたのだ。

「おぉ・・・」
幸造は見慣れぬ顔を見て、戸惑いの声を出した。

暫らく考え込んだ後で叫んだ。

「伊藤はんかっ・・・?」
その大きな声に裕子はビクッと肩をすくめた。

「よう、来てくれたなぁ・・・」
「ひっ・・・」

皺がれた両手で、裕子の手を掴みながら顔を寄せてくる。

「今日から、ワシの専属秘書や・・・
たのむでぇ・・・」

「は、はい・・・伊藤裕子と申します。
よ、宜しくお願いいたします・・・」

裕子は深々とお辞儀をすると、逃げるように社長室を出ていった。

「はは・・・」
怯えた仕草に苦笑いしながら、幸造はソファーに腰を下ろした。

裕子が置いていったカップから湯気が昇っている。

「美味い・・・」
コーヒーを一口啜り、嬉しそうに声を出した。

コーヒーの香りと共に、裕子の匂いを感じた。
さっきの秘書のキツイ香水ではない、爽やかな残り香りだった。

裕子が出ていったドアを眺めながら、幸造は満足そうな笑みを浮かべるのだった。
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