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エリート妻色情飼育
第215章 第八章 リング
「もしかして・・・
アイ、ラブ、ユー・・・?」

覗き込む女の目が潤んでいる。

「イ、イエス・・・」
「ふふふふ・・・」

裕子は男の胸に顔を埋め笑い出した。
細い肩が震えている。

愛おしく思った悟は両腕で抱きしめた。

裕子も男の腰をギュッとする。
顔を上げ、悟の頬にキスをした。

「嬉しい・・・」
ウットリと目を閉じ、男の胸に頬を摺り寄せる。

「月が綺麗です」は「I love you」の和訳。
漱石のマネをする悟が可笑しかった。

軽妙な口調で話が上手い父と違って、真面目な悟は冗談が下手だ。
今回も精一杯、気障なセリフを考えてきたのだろうけど、噴き出すほどに滑稽だと思った。

「あれって、都市伝説なのよぉ・・・」
「ええっ・・?」

裕子に言われて悟はショックを受けた。
ずっと昔から本当の逸話だと思っていたからだ。

明治時代の日本では「愛している」などという言葉は一般庶民では使われないから「月が綺麗です」という訳がピッタリだなんて、漱石らしいと信じていたのに。
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