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幻影の胡蝶 〜桃源郷の寵妃達〜
第3章 四神の最高位【玄武】
あの鶯が胡蝶を気にしている。

それがどんな事を指しているのか、朱雀は分かっていた。






寵愛を受けずに、転生を決めなく誰かの寵妃になる事を望んで桃源郷に残っているモノを、『下の者』と呼んでいた。

鶯は桃源郷に来て数年経つが、寵愛を受けずに下の者のままだった。





桃源郷はしばらく過ごしていると、前世の記憶も曖昧になり、満たされた女人は転生を選ぶ。

だけど稀に、こうして桃源郷に強い思い入れを残して留まる女人も居た。

舞鶴もまさにそんな下の者の代表だ。






舞鶴の場合は、彼らの寵愛はあれど自分の意思で下の者として桃源郷に残っている。

そうでない者は、やはり四天王の寵愛を受けようと、躍起になっている者も多い。

鶯はそんな中で、1番四天王が気にしている女人だった。






彼女は寵妃にになれない苛立ちを抑える事は無く、度々その感情を他の女人で発散していた。

所謂、厄介者なのだ。





そんな鶯が胡蝶を気にしている。

何か悪い事が起きるのではないかと、舞鶴が気にするのも当たり屋だった。






だけどどうやら朱雀は違った様だ。

「……鶯は…玄武が宥めるだろう。」

そう呟くと舞鶴に手を伸ばした。






朱雀の手は優しく舞鶴を抱きしめる。

そんな胡蝶の心配より、朱雀は目の前の舞鶴の方が彼の心を掴んでいた。






桔梗と同じで、共に胡蝶を見送った舞鶴は、朱雀にとっては特別だった。

あの心の痛みを分け合った。

そんな仲間意識は朱雀の心を少しだけ癒す存在だ。






朱雀に抱き締められると、舞鶴はその腕の中でゆっくり目を瞑った。

久しぶりの朱雀の香りに酔いしれる様に、舞鶴も彼の背中に手を伸ばす。






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