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幻影の胡蝶 〜桃源郷の寵妃達〜
第2章 桃源郷は地獄だった
「ああっ朱雀様っ!!」





朱雀の体を押し付けられて、桔梗は目を薄っすら開けて、朱雀の肩越しから窓の外を見た。





今宵は満月で、窓の枠一杯の金色の月が輝いていた。

その光景を見ながら、桔梗は涙を流して朱雀の背中に爪を立てた。






金色に光る満月の日でなければ、朱雀は自分に会いに来ない。






あの日。

同じ金色に光る満月の下で。

朱雀は胡蝶を見送った。






最後まで縋った朱雀を。

胡蝶は一瞥もせずに、その回路の入り口に消えていった。

朱雀を捨てて、最愛の人の元に戻る為に。






「っは……ああっ…っ。」

「はぁ…桔梗……。」





ギシギシとベットが軋む音と、2人の吐息だけが響いていた。

何度も繰り返す律動で、桔梗の体が大きく跳ねた。

同時に朱雀のモノを咥えている桔梗の中が強く締め付けられる。





「っあ……桔梗っ……。」

小さなため息と一緒に、朱雀の声が漏れると、桔梗の中で朱雀のモノが大きく跳ねた。

自分の中に朱雀の精液が何度も注がれているのを感じながら、桔梗は朱雀から絡めている手を離した。






重量に逆らう事なく、ベットの上に桔梗の腕は落ちた。

しばらく大きく呼吸を繰り返しながら、桔梗は自分にもたれる朱雀の体温を感じた。





ああ、どう言うわけか。

他の女人を思っているこの男が、どうしようもなく愛おしかった。





朱雀を抱き締める気持ちになれない手を、朱雀から握ってきた。

こんなに虚しい気持ちにされる男でも。

その男が縋っているのも、また自分だった。






「……朱雀様……。」

朱雀が握った手を、握り返した。

ギュッとキツく握られた手は、胡蝶を見送ったあの日を思わせた。






胡蝶の背後を見ながら、朱雀と桔梗は同じ様に手を握りながら、その背中を見送った。
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